2013年9月22日日曜日

9/21 変わらないローマと変わっていくローマ

さあ、オルヴィエートに別れを告げて、最後の訪問地ローマに向けて出発である。

いざ別れるとなると寂しくなるもので、部屋を見渡すと低料金の割には清潔で過ごしやすかったなあ、としみじみ思う。
最初に見つけにくかったことと、冷蔵庫がなかったのとが少々不便ではあったが・・・・







少しゆっくりめの朝食を摂って、荷造りを終えたら、チェックアウトの10時半になっていた。

予定通りの190€を支払い、打ち合わせ通り徒歩でフニコラーレの駅に向かう。
B&Bを北に出て、オルヴィエートの街を東西に突き抜ける道を東に進む。ドゥオーモから出る満員バスを待って、重いトランクを数ステップ持ち上げる事を思ったら、石畳の路を歩く方がよほど楽しい。実際にそれは大正解だった。

呆気なくフニコラーレの駅に着いてチケットを買った。
改札口を入ろうとしたら、妻のトランクだけが改札口を通り勝手に転がりだし、本人は足止めをされてしまった。
正しくチケットが読み込まれなかっただけの話だが、そのトランクを東洋人の若い男性が「オ〜!」と言って止めてくれた。
人懐っこい中国人学生だった。
フニコラーレに乗ってもわざわざ席を私達の前に移動してきて積極的に話しかけてくる。

なにかにきりと英語の単語を言うのだが、私は咄嗟には分からなかった。
「ゴメンね、英語が下手なもんで」と言うと彼も「いいえ、僕の方こそ下手くそで済みません」と言って(多分)、スマホを操作して私に画面を見せた。そこには宮崎駿の文字が…
私たちがとっさに「ラピュタだ!」と叫ぶと、彼も「イエス、ラピュタ!」
彼は「天空の城ラピュタ」を見て憧れてオルヴィエートに来たという。

「私達もそうだよ」と言って顔を見合わせる。
大学院生で、この三週間、スウェーデン、ドイツ・・・そしてイタリアに来ている。これから最後にU.Kに行くのだそうだ。
フニコラーレが麓に降りるまでの、ほんの僅かな時間だったが、とても暖かい時間が持てたような気がする。

私は37年前に一ヶ月間、ユーレイルパスを使ってヨーロッパを旅したことを思い出していた。
やはり若いことは素晴らしい。彼にもたくさんの事を見て、たくさんのことを経験して欲しい。
「ありがとう!良い旅を!」と言って別れた。

最近はイタリアに来ても、中国人団体客に出会うことが多い。日本人よりはるかに多い。
良くない事とは思いながら、意識してしまう。それも決し好印象ではなく・・・
きっと、それは相手も同じなのだろうが、恐らくお互いに険しい目つきになっているに違いない。
それが、今日の学生との間には全く無かったのが本当に嬉しい。
やはり一人の人間対人間なら、こうなれるのだろうか。

国鉄の駅から見たフニコラーレの駅

鉄道は一等車を頼むのを忘れて二等車の切符を買ってしまった。
別に贅沢をするつもりは無いが、いつも大きな荷物を持って乗り込む事になるので、置き場所に困ることが多くて、一等車の指定をとることにしている。
ところが、今日は窓口で買ったせいもあるが、指定をし忘れたら二等車になってしまった。
11時23分発の列車だ。
程良い待ち時間じゃないか。

探すとエレベータは有った!コノヤロー!
「-0」を押すと確かに降りて行った。
でもエレベータを降りると辺りは真っ暗。
5メートル程に光が見える。降車客がエレベータの存在を知らずに階段に向かっているのだ。
ほ~・・・まるで、降車客にはエレベータは使わせないぞ!という姿勢か?と思わせる措置である。
何を考えてる?イタリア国鉄。

ただし、地下通路からプラットホームへはどこを探してエレベータは無い。
階段をトランク持ち上げて登るしかない。
持ち上げてみると、あと電車には10分少々の待ち時間がある。
妻は「写真撮ってくる。だって改札口もないもんね」元気だ。
私は汗を乾かしている間に、妻は駅を出てオルヴィエートの崖を撮影に出かけて行った
 

列車が来た。
これでオルヴィエートにもお別れだ。

案の定、何とか席には座れたが、デカイ荷物が周囲に迷惑をかける。
「ごめんなさい!」と恐縮してすわろうとしたら、向かいに座っていたシスターと中年労働者風の男は「気にすることないよ」と、ここに入れよとばかりに自分の足を引っ込めずらして暮れた。
こういう時、しみじみと「人の心は通じるものだなぁ」と思う。
いや、日本だったらどうなんだろう?とも思ってしまう・・・・
よく「日本人は親切だ」と言う。確かにそうかもしれないが、イタリア人にも親切な人はいっぱい居る。
或いはお互い、外国人旅行者には無意識に親切になれるのか?

一時間二十分ほどで、ローマのテルミニ駅に到着。
進行方向に対して一番右側。一番線である。
全くホテルとは逆の位置かも?
しかもターミナルの奥まで入れさせて貰えない。どういうこった?ローカル線への差別か?
だから、電車を降りてから延々歩く、歩く!
駅構内に大きなSPARが出来ている。妻は当たり前のように「ちょっと見てくる。ここで待ってて良いよ。」
待つに決まってるわさ。こんなデカイ荷物ガラガラさせてお店になんか入れるもんですか。
その間に、私はスマホのMapでホテルの場所を確認。
やはりテルミニ駅をでて、直ぐ左側に1ブロック行った先だ。

何処の街に行っても日用、食品等の価格を確かめないではいられない妻を待つこと15分。

なかなか品揃えも豊富なようだ。しかしローマでは水ぐらいしか買わないぞ。
ようやくテルミニのコンコースを歩き始めると、明らかに二年半前とは雰囲気が違う。ひょっとして、テルミニ駅は全面改装したか?
明るくなって、おシャレになっているではないか!
二年半前には、駅全体が暗く不潔で怖くて・・・今日は怪しげな人物も見かけない。
以前は地下の暗い所にあったマクドナルドが地上にデ〜ンと進出している。
イタリア系パニーニのお店も負けじとデ〜ンである。
二人で「ホ〜!」「ヘ〜!」とおのぼりさんよろしく感心しながら西側の出口を出る。

ちなみにイタリア人はマクドナルドが大好きらしい。
価格を見ると日本より明らかに高いが、それでも列を作ってビッグマックを買う。フィレンツェにも大きなお店が何カ所かあったし、名古屋にはないバーガーキングまでもがあったのだ。
「イタリア人はピザかパニーニを食べろ!」と言ってやりたいが、今日日、フランス人ですら硬いバゲットを避けて、生焼けのソフトバゲットを好むそうな・・・無理もないか。

UNA HOTELは予想を超えた素晴らしいホテルだった。
とにかく、テルミニ駅に近いという条件で選んだので、価格は少々高めだがピッカピカで綺麗だし、内容を考慮したら、パフォーマンスは非常に高いホテルじゃないだろうか?
チェックインの時間前だったので、少々部屋探しに時間がかかったが、無事チェックイン完了。

部屋で午後の行き先を決め出発。
今日は前回見逃したパンテオンとナヴォーナ広場。
地下鉄でBarberiniまで行き、そこからバスで行く。

地下鉄の一回券は1€から1.5€に、一日券は3€から6€に値上げされていた。
他国のことは言えないが、イタリアも経済危機。止むを得ないのだろう。フィレンツェでも一泊あたりの宿泊税4€を取られ物価高は実感する。
地下鉄は迷いもなく一日券を購入したが、自動券売機の反応も以前より早くなっており、怪しげな人物も今日は近づいて来ない。
安全な街ローマに変貌しているかのようだ。



懐かしいメトロのゲートを通って地下鉄に。
しかしBarberiniで降りてからのバスが大変だった。
まずはバス乗り場が分からない。交差点にはバス停が幾つもあってどこに何番のバスが停車するかが分からない。
路線番号を人に聞いて場所を尋ねてようやくバス停に。
しかし、ミニバス116番が便利だと知ってはいてもそのバスが全然来ない。
なにせ、ローマのバスはバス停に行っても、そのバスが何時何分に来るのか?何分おきに運行されているか?全く分からないのだ。分かるのはそのコースの停留所の名前のみ。
パンテオンに行くのに、どのバス停で降りれば良いかも分からないのだ。
これは前回もヤマ勘に頼った。
ま、尤も観光客でバスによる人はあまり居ないのかもしれないが・・・・

近くのタバッキのおじさんに尋ねても
「パンテオンなんて4区間だけなんだから皆歩くんだ。お前も歩け!」
と言って、こちらの質問には全く答えてくれない。
そりゃ、そうかも知れない。でも、こっちとらさっきオルヴィエートから着いたばかりで疲れてんだ。
大きなお世話だ。

業を煮やした妻は、停車した番号の違うバスの運ちゃんに、「パンテオン OK?」と尋ねた。なかなか良い方法だ。結果はNoだったが、私もその策をとることにした。
次のバスには私が同じように尋ねた。一瞬考えた運ちゃんは「OK!」
ヤッターッ!
我々は運ちゃんの隣に立ち、四つほどの停留所をやり過し、ある停留所の前で信号待ちになった。
運ちゃんは「この路地を入って行け!」と手で示してくれた上で、直後の停留所で降りるよう促してくれた。グラッツィエ!イタリア人は親切な人もいっぱいいる。

ローマのバス路線はいくつもあり、使い慣れると本当に便利なのだが、今回のように滞在期間が短いとそれもなかなか難しい。

細い路地に溢れんばかりの人が行き交う。
パンテオンは期待通りの荘厳さであった。古代ローマの遺跡がそのまま残っていることに感動した。写真も自由に撮らせてくれる。

ラファエロのお墓、イタリア統一の功労者ヴィットーリオ・エマヌエーレ二世のお墓もある。
休憩も兼ねて、ここではゆっくりさせて貰った。
ラファエロのお墓
ラファエロ像


ラファエロの棺




5時からはミサが始まるというので、一般観光客は外に出された。
建物の外見も他で見る、ゴシック、ルネッサンス様式とは異なる、エンタシスを構えた神殿様式の重厚な建物である。

少し奥に進んで、今度はヴィットーリオ広場に向かった。

古代には競技場だったというこの広場には、4大河の噴水を中心として世界中から多くの人達が集まって来ている。


方々で様々なパフォーマンスも繰り広げられており人々を楽しませている。
色んな場所で同じパフォーマンスをしていた
流行してる?
透明人間ってか?

私たちはその広場に面したサンタ・ニェーゼ・アゴーネ教会(S.Agness in Agone)に入った。
素晴らしい彫刻とレリーフが壁という壁を覆い尽くしている。
聖アグネスが殺された場所だという。







長い時間ここで気持ちを落ち着かせ、外に出る。

噴水の周りは、まだまだ人でいっぱいだ。

ナヴォーナ広場
ナルちゃん気味のアコーディオン弾きおネエさん


ダンスパフォーマンを少し楽しんだあと、今日の最後の目的地であるCorneliaのPizzeriaで夕食を摂ること為に出発。

この店は昔泊まったホテルに帰る途中にあったPizzeriaだ。
勇気を出して入ったら、東洋人なんて見るのが初めて、という突き刺さる視線の中で、他人が食べている料理を指さし注文した、言わばローマでの原体験のようなPizzeriaなのだ。
今回はここに行くことは無言のうちに決まっていた。

ナヴォーナ広場は狭い路地に囲まれ、広い通りもなくバスも通っていない。

やっと見つけたバス停で地下鉄の駅まで行きそうな路線を探すも、一向にくる気配がない。
バス停の表記は、各路線の停留所の名前が列挙されており、今居る停留所が矩形線で囲まれている。停留所で地下鉄に乗り換え可能な場合には赤地に白いMマークが付いている。何度見てもマクドナルドに思えてしまう。

若者が歩いて通りすがりに「いくら待ってもバスは来やしないよ!XXXXXXXXだからさ」と言った。理由は分からないが、そこにいた全員が歩き出したので、我らもそうするしかない。
その理由は次の日になって、なんとなく分かるようになるのだが・・・・・

テヴェレ川の向こうに最高裁判所が見える。立派な建物だ。
最高裁判所

テヴェレ川を渡る橋の中で西のほうを向くと、サンピエトロ大聖堂、サンタンジェロ城が夕日にシルエットを浮かべていた。
今回は行けなかったが、やはり美しかったサンピエトロ

どこにバス停があるかは全く分からなかったが、カンで最高裁判所の裏手に回った。
バス停はあったし、バスも走っていそうだ。
ようやくバスに乗り、Lepantへ。
バスは停留所のアナウンスも無く、降車スイッチが押されない限り無言で通過してしまうので、周囲の様子を窺って降りるしかない。
地下鉄の駅が有る所だから降りる人も多いだろうという当たりをつけて降りた。
大当たり!

ようやく地下鉄の乗ってCorneliaに向かう。
終点の一歩手前の駅だから徐々に人は減っていく。
Corneliaの駅も以前に比べて明るくなったようだし、エスカレーターもまともに動いている。

外に出ると懐かしい風景が広がった。目的のPizzeriaも直ぐ見つかったが、以前に比べて派手になっている。席に通してもらう間に中国人団体客のご入場!
あ〜ここでもかぁ!?

前回はブラウン管だったテレビ台の上に液晶テレビ。圧倒的にSAMSUNGが多い
味は残念ながら落ちていた。ピザも焼き過ぎ感があり、チーズもイマイチ。
まるで団体客用の店になってしまったようだ。
でも、これで吹っ切れた。
もうこの店に来る事もあるまい。
ワインも飲まず、いそいそとホテルに帰ったのである。

変わらないローマ。変わっていくローマ。
どちらも大好きなローマに違いないが・・・・



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