2013年6月5日水曜日

修学院にて

8時20分、予定を20分遅れての出発。
京都への三人揃っての家族旅行は9年ぶり位にはなるだろうか。
とりたてて急ぐ旅でもなし、トイレに行くだの、仕事の電話が入っただの、お腹が空いただのと、その都度休憩である。
おまけにパーキングエリアでは珍しくもない物を、買うでもなくコメントしながら見て廻るのを我が家の女性陣は喜びとしているので、こちらとしても無駄な抵抗はしないのだ。

結果として、京都東インターを出たのは正午を過ぎ、最初の目的地である詩仙堂前の駐車場に車を止めたのが13時となった。
この時点で、京都ラーメン街で美味そうな店を探してラーメンを食べるという計画は、呆気なく頓挫したのである。

急ぐ旅ではないとは言うものの、15時には修学院離宮見学の予約を入れてある。それには間に合わせなければならない。
ようやく皆の気持ちに時間の意識が芽生えて来たらしぃ。
頑張って歩くぞ!
しかし、今日の京はとにかく暑い!
最近よく耳にする『梅雨のズル休み』というヤツらしい。
「ズル休み」って言う割には、愛想も無く強烈過ぎない?

<金福寺>
先ずは『金福寺』。松尾芭蕉ゆかりの庵を後の与謝蕪村が復興したらしい。
暑い中、人が少ない事だけが救いだ。
訪問客は、数組のみ。

鄙びた山庵に、のどかな空気が流れて行く。
やはり、この辺りの寺の繁忙期は秋らしく、見ればなるほど新緑のかえでが鮮やかである。
庵の少し上まで登ると、京都市内の北半分くらいは一望できる。

<詩仙堂>
さて、続いて詩仙堂。
名前はよく聞いていたが訪れるのは実は初めて。
門をくぐり抜けると、竹林が我々を出迎えてくれる。




建物の中に入ると、嘘のように涼しい。
ホッ・・・

暗い建物内部から美しい庭園を眺めれば、暫し暑さを忘れる。
詩仙堂は、非常に細かな白砂に囲まれており、庭園もそれを強調した配置だ。砂の白、新緑、皐月の花の濃いピンクが強烈な日差しに映えている。スリッパを借りて庭を散策してみると、所々にあやめなのか菖蒲なのかよくは判らないのだが、それ系の花が咲いている。
少し休憩をさせてもらった気持ちだ。

本当はもう一つ、曼殊院にだけは行きたかったのだが、そろそろ時間切れ。
次の機会としよう。

私は狭い路地をノロノロと修学院離宮を目指して車を進めるのだが、地元の車は結構ビュンビュン飛ばしている。怖いことこの上ない。
更には、京都では自転車が多い事も目をみはるのだが、実はこの自転車、車に負けていないのだ。前後に子供を乗せ涼しい顔をして車の隙間を走り抜ける。子供に怪我をさせてはいけないと、私は殆ど車を止めてしまう。
これでは絶対に事故を起こすなぁ~、と思うのだが、その実、愛知県が毎年交通事故死ワースト1付近をウロチョロしているところからすると、これは私の杞憂に過ぎないのだろうか?
京都のママチャリ、怖~い!

さて、狭い路地を抜け、修学院離宮の手前にある駐車場に落ち着く。
私も大学入学から1年近く修学院道付近に住んでいたことがあるので、来る道々の周囲を観察していたのだが、全く面影は無い。多分、街の様子が変わった事と、40数年前の記憶が遥か彼方に追いやられている事がそうさせているに違いない。
当時は田圃が広がった田園風景の中、川沿いを中心に住宅が立ち並ぶ、という程度の土地だったように思う。後から聞く「修学院村」という名前に相応しかったような気がする。

<修学院離宮>
修学院離宮の入り口まで歩いて行くと、15人程のジジババが所在無さげにたむろしている。訊いてみれば、皆さん15時に予約を入れた、我らのお仲間らしい。
う~ん・・・・ウチは結構若手かな?娘も居るし・・・
予約時間の20分程前になると「立入禁止」と書かれた柵が取り除かれた。
それぞれ予約票を見せて中へ。
受付では代表者の身分証明書の提示が求められ、人数を確認する。
なかなか厳重なチェックではないか。
受付を済ませると待機場所となっている建物に入り、開始10分前になると修学院離宮の概要を説明するビデオが流れる。
さて、定刻になると外に出され、ガイドのお兄ちゃんについて、25人程度のジジババ(我が娘を除いて)が歩いて回るツアーの始まり!始まり!
自己紹介に始まったガイドのお兄ちゃん、どう見ても「昭和」な子だ。
髪はストレートで、70年代のフォーク歌手のようだし(そうそう、デビュー当時のさだまさし風)、狭い肩幅からずり落ちそうな地模様の入ったドレスシャツ、グレーのスラックス、ほとんど無い腰にベルトを巻いて落ちそうなズボンをやっとの思いで留めているとった風である。
昭和くん
しかも目鼻立ちが、いわゆるお公家さん風なので、娘は思わず「この人貴族?」
歩きだして見てみると、昭和くん、摺り足なのだ。やっぱ貴族か?
あの~・・・・埃っぽいんですけど・・・・
修学院離宮は砂利が敷きつめてあり、そこに摺り足で容赦なく歩くものだから、後に続く我々は砂塵にまみれての行軍とならざるを得ない。
しかし、昭和くん、知識はハンバ無し、声も良く通る!
執拗な爺さん連中の質問にも臆することなくテキパキと答えていたのには驚く。
ガイドとしてはプロかな?

内部はさすがに宮内庁予算の賜物か、非常に管理が行き届いている。

昭和くんの説明は聴きたいのだか、スマホで撮る、デジカメも撮る、と大忙しの私は、後でパンフレット見ようと諦め最後尾に近い所を付いて行く。
私より後ろに人の気配が・・・・・胡乱な雰囲気を出している。
良く見てみると、胸に「POLICE」のバッジだ。
お~、胡乱なのは私でございました。
A POLICE MAN
昭和くんが鍵で或る区画の入口を開け我々を誘う。グループ全員がその区画に入りきったことを判断して、この胡乱な人物(いや、POLICE)が入口を閉めて封鎖してしまう。
その区画が終わると、ガイドが出口を開け、全員の退出を見計らってPOLICEが出口を閉じる。
このようにしてツアーが進められて行く。
私は、ディズニーランドのアトラクションと、昨年行ったミラノに「最後の晩餐」を思い出していた。
最後の場所では、写真を撮ることに夢中になっていた私はPOLICEに「皆さん、待ってるんで・・・」と、追い出しを食らってしまった。
「あ~、済みません!」と爺さんダッシュ!
それぞれの場所で人数もチェックしている。妙な場所に潜り込んだりしない為の最低限のセキュリティと見た。

楽しい1時間半のツアーだった。のどかな田園風景、整備された庭園、簡素であるが上品な建物・調度品・・・

でもさ、昭和くん!あの摺り足は止めた方が良いと思うよ。
爺さんは愛を以って彼にアドバイスしたい・・・彼の革靴も砂埃で真っ白なのだから。

さて、これでほぼ一日の予定は消化。
これから一旦ホテルにチェックインして食事に出掛ける予定だ。

16時半、「エクシブ京都離宮」を目指す。
途中、「三宅八幡」を通り過ぎる。この辺りも学生時代に友人が住んでいて、一度は訪れた事があるので、例によってキョロキョロ。
しかし、ぜ~んぜん面影無い!
だってあの頃、文字通り、この辺は何も無かったもんねえ!!
それが鉄筋コンクリートの建物が建っているではないか?
少なくとも道路沿いには住宅がみっちりだ。
40年なんて、過ぎてしまえばあっという間の人生の、片道に過ぎない想いだったのだが、やはり実際には街の風景を一変させるに充分な時が流れた、ということだ。

エクシブは、予想通り可も無く不可も無くという綺麗な建物。
チェックインして546号室へ。
既に足は疲れているが、ここでほっこりしてしまうと、食事に出掛けるのが億劫になるに決まっているでの、私は靴も脱がずに暫し休息し、17時半前に出発。

ホテルに来る前に場所は確認してあったので、迷わず「アルザス]へ。
近くのコインパーキングに車を留めた。丁度18時だ。
案外、京都にも駐車場はあるものだ。
少なくとも名所旧跡の周辺にはあるものらしい。今日はおかげで助かっている。
とは行っても、異様に細い道が多いので、「車庫入れ」には苦労する。
見てみると、駐車場のポールであるとか、柵には沢山の擦り傷があるのは、その難しさを物語っているようだ。小さい車にしておいて良かったなあ!

<アルザス(Alsace)>
さて、アルザスの店内は思った以上に狭い!
間口は270Cm程度か?
入り口全面開放!
入って左側の壁に向かい合わせの二人用デーブルが三組縦に並ぶ。
右側には4人掛けテーブルが二組。これが全て。
奥はキッチンになっていて、そこから愛想の良いマスターが迎えてくれる。
どうやら私達は今日最初の客だったようだ。
食いっぱぐれは怖いので予約してきたが、平日早い時間ならば飛び込みもOKらしい。
フレンチではあるが、レストランというよりビストロだ。全てはアラカルト・メニューで、ワインを飲みながら食事を進めるのが良さそう。私は無粋にもノン・アルコール・ビールが有るかどうか確認したが、さすがにNONとのこと。そうですよねぇ・・・・お水で良いで~す。
最初に頼んだのは、ココヤシのサラダ、ニンジンのサラダ、エスカルゴ、イワシの香草焼き。
最初にパンが運ばれる。それをかじりながらメニューを見て待つ。

ココヤシのサラダなんて初めてだ。評判が良いから頼んだのだが、これが期待以上。
例えて言えば、タケノコが成長する前の竹の新芽であるように、これは成長前のココヤシの幹とのこと。これにバルサミコ酢ベースのドレッシングがかけてある、と思えば良い。
これが実に美味しいのだ。しかもきちんとフレンチの味になっている。

ニンジンのサラダも同様なバルサミコ酢っぽいドレッシングで美味しい。
お皿いっぱいふんわり盛ったニンジンが見る見る減っていく。

勿論、エスカルゴは何をか言わんや。
少々小ぶりなカタツムリが6個だが、味付けはしっかりしている。
これが900円というから余りに安い!
当然だが、このエスカルゴのソースがまたイケるのだ。
たこ焼きキットのような鉄板に、少し細くしたパンを押しつけソースを染み込ませる。

イワシの香草焼きも、心配していた程の塩分は無く、オイルに付けられた味は案外上品である。

さて、そろそろ、他のお客も入って来た。
仕事帰りに買い物してきました風のオバちゃんが、「あとで娘と来るから」といって席の予約をして、「エスカルゴだけ取り敢えず頼んどきます」と言って出て行った。常連さんでもないみたい。
他に若いカップルが二組。一組は予約客らしい。
しかし、一人で店を切り盛りしている割に、段取りが良く、それほど待つ、という感じも無い。

一皿あたりのボリュームが判らないので、少しずつ注文していたが、追加の注文した「牛肉のホワイトソース煮」がいよいよ来た。
う~ん、これも美味しい!!
大きくカットされたお肉には下味がしっかりと付いている・・・・なんだろうな?
横にはライス。ドリア風に、しっかりと「しん」がある。
カリフォルニア米かな?とも思ったが、形状をみるとジャポニカ米のようだ。
その肉とライスの上にしっかり、多すぎもせずトロんとしたホワイトソースがかかっているのだ。
もう、大満足!!

あちらのテーブルでは母娘のエスカルゴが終わったらしく、マスタがタコ焼きセットを引き上げようとしたら、さすが母!
すかさずマスターの手を軽く遮って、笑顔で「これは・・・・」
誰も同じことを考える。
母娘で鉄板にパンを擦りつけていた。

さあ、ここらで大冒険!
「豚の血ソーセージ」なるものを頼んでみた。
ドイツの紹介番組などで、作るシーンは見た事がある。細かな肉片と血を集めて作るソーセージ。
まず色が凄い!どす黒いと言えば良いのか・・・・
家内は早々に退却宣言。
味も個性的である。決して血の臭い、血の味がするという訳でもないが、やはり味わったことの無い初めての味である。慣れればクセになるかも?

もう、この辺でお腹はイッパイである。
最後のシメは「コーヒー・アイス」なり!
コーヒー味のアイスではなく、アイスクリームにエスプレッソがかかっていると思えば良いのか。
一個600円でボリューム満点。
これが3個運ばれて来た時には、他のお客さんの視線はウチに集まっていた。歓声を上げている人も居る。訳の分んない優越感?
これが、絶品でした!
ひと匙ごとにエスプレッソのビターな味の絡み方が違い、それがアイスクリームの味の違いを生み出している。
3人とも、感動しながら一気に完食!

さあ、これでお会計は・・・・7,500円!
え?ウソッ?マジ?
なに?この安さは?
その後の家族の会話・・・・「こんなお店が近くにあったら、少なくとも毎月食べに来るのに」

お料理の味とボリューム、マスタの好印象に大満足の末、3人は大きなお腹を抱えてホテルに戻ったのであります。

<エクシブ離宮京都>
まだ9時だ。
さあ、お風呂だお風呂。
エレベータを乗換え、グランドフロアーの大風呂へ。
エクシブの特徴として、アップダウンの多い土地に建てるものだから、階数が分り難い。
この京都離宮も1階だと思っていたロビーは3階で、地下だと思っていた駐車場は1階。お風呂は更にその下グランドフロアーというわけだ。
帰りに同じエレベータに乗り合わせたオバちゃん連中も「上だ」「下だ」と大騒ぎ。
降りる時に私に「ホント、エクシブって分り難いですよねえ?」と。
「ですよね?」と穏便なお答えを・・・・見りゃ分るだろ!とは決して言わないのです。

部屋に戻ってみると、家内が「お部屋変わるから」と涼しい顔で言う。
聞いてみるとどうやらこの部屋には蚊が居て刺されららしい。娘も同様。
言われてみれば私も足首が・・・・
私が風呂に入っている間に、フロントに電話をしたらしく、電子蚊取機を持って来てくれたのだが、それでは収まらず、部屋を変えて貰うことにしたらしい。
リラックスした格好してるのに、また荷物をまとめて移動ですか?
ま、決まった事は従いましょう。
今度は同じフロアの522号室。
荷物持って短パンで移動です。
「ホテルの清掃が悪いのか?蚊君が悪いのか?交渉した家内が偉いのか?」と呟きながら歩いて行ったのであります。
おっ?今度の部屋はちょっと様子がおかしい。
電気をつけてみると、なんと今度の部屋は広いのです。
さらに、ソファーなどの調度品も無駄に豪華です。
いや~、何だか得しちゃったなぁ!
「蚊君、ありがとう!」と娘と私は、掌を反したように感謝したのは言うまでもありません。


これで、足首が布団からはみ出しても、痒くなることなく眠られます。

今日の歩数は7,330歩。歩いたなぁ!


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