いよいよ今日から今回のメイン・イベントであるドライブ・ツアーの開始である。
トランクをゴロゴロ転がして駅に向かって歩いていると、右後方から「アーッ!」という大きな叫び声が聞こえた。
私は思わず驚いて振り返った。
そこには、昨日警察署で一緒になった青森母娘3人連れが大騒ぎしながら立っていた。
私達も即座に大きな声を上げていた。
3人が私たちの方に駆け寄って来た。
何という偶然だろうか?
それに、たった昨日一日、しかも1時間程度の出会っただけなのに、この喜び方は何なのだろう?
お互いにどん底で出会い、慰め合ったことが、こんなにも他人同士の距離を縮めてくれたのだ。
聞けば彼女らのホテルもこの近くらしい。
明日は列車でフィレンツェに向かうので、今日はその為の駅の下見とか。
一緒に駅まで歩いた。
おっとりしたお母さんと長女。しっかり者の次女というとりあわせのようだ。
旅の企画は次女が全てを取り仕切ったらしい。
主に妻はお母さんと長女を相手に、私は次女と話をした。
「列車はどうやって確認するんですか?」
「ほら、あの電光掲示板に列車のリストが出てるでしょ?あの番号がプラットホームの番号だから大丈夫だってば!予約はしてあるの?」
「日本で予約してきました」
「打刻を忘れないようにね!僕らはこれからフィウミチーノ空港まで行って、そこでレンタカーを借りてトスカーナをドライブするんだ」
「ヘェー!凄い!勇気ありますね?」
「車でないと行けないからね~」
お互いの荷物に気をつけながら、輪になって会話を弾ませた。
「現金はビニール袋に入れてマスキングテープで靴の中底に貼ってあるんだよ!」
「いや~!それ良いわぁ!」
互いに写真を撮り合った。
残りの旅程、お互いの無事を祈りながら別れ、私達は空港行の列車が入る一番ホームに向かった。
自販機でチケットを買い、刻印を済ませ,た。
列車はかなり混んでいたが、とにかく二人とも座れた。
空港に着いたら、レンタカー・オフィスを探すことから始まる。
車と鍵の絵がレンタカー・オフィスのアイコンである。
案外簡単にアイコンは見つけることができ、動く歩道(時々動いていない歩道)と使ってレンタカー会社が集まっている所を目指した。
事前の情報では私が借りる「Locauto」というイタリアのローカル会社のオフィスは別の場所にある、とのことだったが、今では同じ場所にある。しかも一番入口に近い所に陣取っている。案外業績を伸ばしているのかも知れない。
次から次へと客が来ています |
サイトによっては大手のHertz、Budget、Europcarにした方が良いという助言も有ったが、何せ条件に合う車がLocautoにしかなかった。
有り体に言えば、私の組んだ日程でオートマチック車はその会社にしか無かったのだ。
手続きはなかなか時間が掛かる。
パスポート、国際免許証、万が一の為のクレジットカードの提示から始まる。
もちろん、唯一の妻のカードを提示した。
さて、それが済むと、追加保険の提案である。
これは通常の保険ではカバーしていない、ウィンドウ・ガラスの破損、ボディ下部の損傷などをカバーする為である。言葉が不自由な外国ではどんなトラブルが発生するか分からない。
事前に承知していた私達は、迷わず申し込む。
レンタカー代が日本円にして約5万6千円、この追加保険が約4万円。計10万円程のコストということになる。
次に提案してきたのが、ガソリン満タン保証である。基本的には車の返却時にはガソリンを満タンにして返すという条件になっているが、この保証に入っていれば満タンでなくとも構わないらしい。
この保証が約2万円程度だと言う。私は即座に計算した。
車はVolks Wagen GOLF
燃費も良いはずだ。
予定走行距離は約700Km。
とすれば、どう考えても2万円は燃料費に掛からないだろう。
この提案は断った。
女子係員が私に言った
「あなたはラッキーですよ。新車ですから!」
「ありがとう!」
鍵を受け取り、指定された駐車場(C棟5F)に行くと、ゲートに区切られた一角があり、その中に各社のレンタカーが駐車されており、その中にGOLFはあった。
こいつが今日から5日間、旅の仲間である。
確かに新車の臭いがする。ODDメーターも10Km足らず。
5日間の相棒GOLF |
荷物を積み込んだ後は、車のチェック。
どのスイッチがどういう機能なのかを事前に把握していないと大変なことになる。
ドイツ車には多少乗り慣れていたので、ある程度は分かっているつもりだった。
しかし左ハンドル、右側通行は何と言っても初めてである。
シフト・レバーが右側にあるというだけで戸惑ってしまう。冷静な時には問題ないのだが・・・
さて散々チェックしいよいよ発車。
まずはレンタカー・エリアから出る時にゲートを通らなくてはならない。
ゲートの前に停車するとカードが出てきた。それを受け取るとゲートが開いた。
その意味は直ぐに分かった。
C5から降りて、空港駐車場を出る時にそのカードを挿入すれば、空港駐車場のゲートが開くというシステムなのだ。日本でもそうなのかな?
駐車場のゲートを出ると、取り敢えずどの方向を目指せば良い?
ガーミン(持参したナビ)は建物を出たばかりで、まだ自分を捕捉できていない。
とにかく、ローマ方面を目指すか?と開き直り、エイヤーッとばかり「Roma」と書かれた標識に従い、高架道路に乗った。
それはいきなり高速道路だった。
ローマの外環状線といったところか?
この頃からガーミンも働き出した。
何とか快調に滑り出したらしい。
ドイツ車特有のゴツゴツ感がサスペンションからお尻に伝わって小気味よい。
高速道路では何の不安も無い。あるとすれば合流車が右から来る程度。そして彼らのスピード。
確かにイタリア人は飛ばす!飛ばす!
制限速度130Km/hのところを150Km/hで平気で走り抜ける。
しかし、私は右端車線をせいぜい100Km/hでマイペース。
イタリア人は確かに「車の性能は100%出し切るのだ!」と言わんばかりにエンジン全開にするらしいが、事故率は日本よりずっと低いそうだ。
つまりは、イタリア人は運転が上手いということらしい。
しかしイタリア人になりきれない私は100Km/hでチンタラ行くのだ。
高速道路は片側3車線なので、右端車線は安全である。
分岐と合流を繰り返し、ローマ周辺の雑踏も抜け、車の数も減った辺りで最初の休憩。
日本でのサービスエリアに該当するのが「AutoGrill」だ。標識は日本と似たような物なので入り口は直ぐに分かる。
お昼時でもあり、サンドウィッチを食べ、トイレを使う。
客も少なくのんびりしたものだ。
これが、ナポリからフィレンツェに通じる幹線道路とは思えないのどかさ。
しかし、日本と違い、イタリアのAutoGrillは眺望の悪い所にしかない。
わざと景色を見せないようにしているとしか考えられない。
休憩が済んだら、今度はこちらが合流する立場。
左側に注意して、思い切り加速してみる。
日本の高速道路に比べれば、合流斜線は若干短いような気がする。
GOLFのクリーンディーゼルはアクセルに充分応えてくれるようだ。
ひょっとしてオルビエートか? |
ガーミンに従い進んでいくと初めての料金所。
もちろん現金払いのゲートを選び進む。
この道路に入る時にカードは渡されていない。
不思議に思っていると、機械から単純に料金を請求された。
何と、4.7€
これだけ走って、たったの4.7€とは!700円じゃん?
安っ!
ここを出れば一般道路だ。
一般道路と言っても、日本の国道などとは全く違い、まだこの時点では自動車専用道路であり、インターチェンジからしか車は入れない。
日本で言えばバイパスのようなイメージか?
片側二車線になっているとは言え、まだまだ快適なのだ。
両側には田園風景が広がる |
街はやはり丘の上です |
案外分離帯や生垣・街路樹が邪魔して景色が見えにくい |
一般道に入ってからもう一度休憩した。
ガソリンスタンド付きコンビニという感じ。
ローマ等の大都会ではトイレに行きたくなったら、結構苦労する。
一番スマートな方法はBARでエスプレッソ(一番安い)をカウンターで飲み、それでトイレを借りる。
しかし、ドライブ・ツアーの場合にはこのような休憩所が割と頻繁にあり、トイレに苦労する事も無いのが助かる。
どのお店にもパニーニが置いてある |
商品の中身も陳列もコンビニと同じ |
ガス入りミネラルウォーターで休憩 |
日本と同じようなアイスクリームも売っています。 |
ペルージャ市内に向かう路線と分れて、いよいよアッシジに向かう。
今回、トスカーナのドライブということになっているが、アッシジはトスカーナ州ではなくウンブリア州である。しかし、この少ないチャンスを生かして今回のドライブコースにアッシジを加えた。
今回、トスカーナのドライブということになっているが、アッシジはトスカーナ州ではなくウンブリア州である。しかし、この少ないチャンスを生かして今回のドライブコースにアッシジを加えた。
いよいよローカルな道路に入り、ラウンド・アバウト初体験。
最初こそ戸惑ったが、ガーミンが「X番目の出口を出ます」と教えてくれるので、直ぐに慣れた。
常に優先はラウンド・アバウトに入っている車。
進入する車は充分減速して様子を見て入って行かなければならない。
麓の市街地を抜けると、見えてきた!
丘の上にアッシジの街だ。
何と言っても、サン・フランチェスコ聖堂が目立つ。
アッシジの街。道路わきに停車してパチリ! |
この街は、白っぽい印象。
きっとこの辺りで採れる石材、煉瓦などが白っぽいのだろう。
順調だったガーミンも、込み入った街並みの中で混乱し始めた。
ホテルの場所が混乱している。
このまま城壁を抜け旧市街に入ってしまうと、何やら抜き差しならない状態に陥りそうな予感がした私は、近くにあった別のホテルの駐車場に頭から突っ込み、Uターンを試みた。
これがいけなかった。
Uターンした道路は実は一方通行だったのだ(気が付いたのは後になってからだが・・)。
取り敢えず無事逆走に成功した私は、公営駐車場の入り口付近に車を停め、近くの売店のオバちゃんにホテルの場所を尋ねた。
言葉は英語交じりのイタリア語で
「あそこだよ!ほら、見えるだろ?城壁の門をくぐって20mくらいさね。」
「オー!グラッツェ!」
「プレーゴ」
大正解だった。
先刻逆走した道を再び登り、門を抜けて旧市街の細い道をゆっくり進むと、Hotel Giottoはそこに有った。ようやく到着である。
到着です |
今の時点では、客は私達しか居ないらしく、最上のロケーションの部屋を確保してくれたようだ。
窓からの眺めは最高!
広がる田園風景 |
窓からはこんな感じ |
何と贅沢な景色なんだろう!! |
眺望を楽しみながら部屋で暫し休んだ後、早速街の散策に・・・・
もちろん、目指すはサン・フランチェスコ聖堂。
ホテルからもほど近い。
この坂を下って |
この坂を登れば |
サン・フランチェスコ聖堂 |
メッチャ絶景! |
サン・フランチェスコ聖堂。二階層になった教会の下層部分の出入り口。 |
今日はもう時間がないので、聖堂もサラッと見学。
しかし、ジョットの描いた28枚のフレスコ画「聖フランチェスコの生涯」は観ておかねば。
特に「小鳥に説教する聖フランチェスコ」は必見。
「No Photo」が残念だ!
もう夕方になっているので、観光客も閑散としてきた。
歩いているのは、個人旅行のヨーロッパ系の人々だけだ。
アッシジはローマからも遠くないので、ローマからの日帰りツアー、あるいはフィレンツェからローマに移動する際に立ち寄る人達が多いのかもしれない。
だから、ホテルも客が少ないのかなぁ?勿体ない気がする。
サン・フランチェスコ通りを東に抜けるとサンタ・キアーラ教会に到達する。
教会見学は明日の午前中にするとして、そろそろお腹も減ってきた。
この広場に面したお土産屋に入って、レストランの場所を訊こうとしたら、お店の主人と話をしていた地元の少女が、すぐ近くにある地元の人が利用するレストランを紹介してくれた。
食べ終わって外に出たら、すっかり夜になっていた。
街と麓の夜景を楽しみながら、ゆっくりホテルに帰った。
もう夕方になっているので、観光客も閑散としてきた。
歩いているのは、個人旅行のヨーロッパ系の人々だけだ。
アッシジはローマからも遠くないので、ローマからの日帰りツアー、あるいはフィレンツェからローマに移動する際に立ち寄る人達が多いのかもしれない。
だから、ホテルも客が少ないのかなぁ?勿体ない気がする。
サン・フランチェスコ通り |
サン・フランチェスコ通り |
サンタ・キアーラ教会 |
サン・フランチェスコ通りを東に抜けるとサンタ・キアーラ教会に到達する。
教会見学は明日の午前中にするとして、そろそろお腹も減ってきた。
この広場に面したお土産屋に入って、レストランの場所を訊こうとしたら、お店の主人と話をしていた地元の少女が、すぐ近くにある地元の人が利用するレストランを紹介してくれた。
郷土料理が18€ |
サン・フランチェスコに説教された小鳥? 残念ながら今では売っていないとのこと |
「frizzante」と書かれているのがガス入りの水です |
お店の看板 |
すっかり夜になりました。 ホテルに帰ります。 |
街と麓の夜景を楽しみながら、ゆっくりホテルに帰った。
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