2013年8月23日金曜日

医療費の怪

私としては珍しく社会的な話題を提供したいと思います。
昨日、取引先の担当者からお聞きした話を御披露しましょう。
彼は先日、心臓のカテーテル手術を受けました。
心臓冠動脈に狭窄部分が見つかったのだ。勿論、発見が遅れれば狭心症、悪くすれば心筋梗塞にもなりかねない。
しかし現在では発見さえ早ければ、足の付け根もしくは腕の付け根から動脈にカテーテルを挿入し、心臓までステント(網状になった金属製の短い管)を運び、狭窄部分でそれをバルーンを使って広げることで、狭くなった血管を広げ、その後も血管を支える。
この程度の事は素人の私も知っているほど一般的な処置である。
しかし、驚くべきは、そのコストなのだ。
手術に伴い一泊二日の入院をしたのだが、渡された請求書に記載された金額を見て、彼は驚愕した。
なんと40万円を超えていたからだ。
勿論その金額は自己負担分のみである。
ということは、総治療費は120万円を超えることになる。
あまりに高価な事実に私も唖然とした。
詳しく聞いてみれば、彼は狭窄部分が二カ所あったために、ステントが二本使われたようだ。
ステント一本の単価が40万円。二本で80万円。残りのコストが医師の技術料、検査費用、入院費用ということになる。
少なくとも、医師の技術料よりステント一本の方がはるかに高価なのだ。
ステントは検索しても直ぐに写真を見ることはできる。
どう贔屓目に見ても、あれが40万円もする物とは考えにくい。
聞けばステントは殆どアメリカからの輸入品なのだそうだ。
確かに成人病先進国のアメリカでこの種の技術、製品が発達したことは想像に難くない。
しかし、あの程度の物が国産化できないとはどう考えても考えにくい。
この事実は何を語っているのだろう。
確かに患者本人の負担は『高額医療費』の申請をする事で、十万円を超える部分については還付される訳だが、問題はそんな事ではない。
残り110万円以上は健保あるいは間接的に税金から支払われることになる。
これでは健康保険制度が破綻すると言われても無理はない。
あくまでも私の想像だが、ステント一本数万円でできるのではないだろうか?
少なくとも日本企業にその力はあるだろうと思うのだが……
そうすれば総治療費は半額以下になる。
更に競争原理が働けば……
なのに、そうなっていないのは何故だろう?
何が阻んでいるのだろう?
アメリカの圧力、それに迎合する厚労省…などと考えてしまうのは少々想像力が逞しすぎるのだろうか?
だが一方では、年々増加する『社会補償費』を錦の御旗に、消費税アップのシナリオが実施されようとしている。
無論、ステント一本で何が変わるものでもない。
ただ、これが氷山の一角だと思うのも、『想像力が逞しすぎる』だけなのだろうか?

2013年8月22日木曜日

ビア・バー「えび寿」

飲食店の事を書くのは6月の京都「アルザス」に続いて2回目である。

取引先の社員さんであったMさん(女性)が、先月退職後に勤め始めたお店ということで、かつての彼女の上司である課長さん共々、昨夜お邪魔した。
無論、彼女への激励が目的である。

新栄町の駅で18時に待ち合わせた我らオッサン二人は北に向かう。
名古屋市芸術創造センター手前の交差点を左折し、一本目の辻を左に視線を向ければ、手前にその店はあった。
”えび寿”・・・・文字通りのビアバーである。

Mさんの驚いた顔を想像し、それを楽しみにしていたのだが、店内から早々と見つけられ、いつもの笑顔で手を振られてしまった。
う~ん・・・・先手を打たれて、ちょっぴり残念?
外はまだ充分明るい。この窓から見つけられてしまった。
 
日中の37度という気温は夕暮れ時には収まっていたものの、身体にしつこくまとわりついていた熱気は店内に入った途端に雨散霧消した。
お客は我々二人のみ。18時という時刻からすれば当然か?
明る過ぎず、暗過ぎず・・・・小ざっぱりしたインテリアだ。
天井が高く、狭いお店なのに解放感がある。

高い吹き抜け天井


まず何にしようか?
ビールはエビスのみ5種類・・・「レギュラー」「ブラック」「ハーフ&ハーフ」「琥珀」「クリーミー・トップ」
順当に「レギュラー!」と行きたいところだが、比較的飲む機会の少ない私にとっては、せっかくのチャンスである。
初物に挑んでみよう!
とは言うものの、そこは無難に「琥珀」でしょうか。
ビールを注ぐMさん

色が実に良いのだ。バックに光がある場合と、闇の場合とでは色が全く違う程に変化する。
まさに琥珀なのである。
課長さんと乾杯をし、グラスを口に持って行ったが、香りを楽しむ間も惜み一気に喉に直撃させる。
言葉が「カ~~~ッ!」「ク~~~ッ!」しか出て来ない。
おまけに声までひっくり返っているではないか。
暑い所からやって来た喉に最高の刺激を与えてくれただけでなく、樽生特有の豊潤な味わいと香りを残し「琥珀」は胃へと滑りこんでいく。
これだけで、ほぼ満足した心持ち。

しかし「おつまみ」も自信があるらしい。

とりあえず「手作りギョーザ」と「4種類のチーズのピッツァ」を注文。
何と、ギョーザの皮もピッツァの生地も手作りだと言う。
確かに、ギョーザの皮のもちもち感が他とは違う。
ピッツァはナポリ風だが、これも生地がもちもちして実に美味しい。
Mさんも自宅で手作りピッツァに挑戦しているようだ。
修行を積んだら、ぜひ彼女のピッツァも賞味させて頂きたいものである。

その後は「クリーミー・トップ」
想像するに上の泡がクリーミーなのでしょう。

来た来た・・・泡が既に落着いている上部と、下の黒ビールから吐き出される淡い泡との2層に分かれている。これが一体化するまで待つのがお作法とのこと。
20秒も待ったろうか?
泡立ちが収まりグラスを口に。
独特な香りだ。
泡を口に含めば、その泡も美味しい。
もちろん、ビール本体は濃厚な味と香りで圧倒する。
「えび寿」の名に恥じない立派なお店ではないか。

20年以上のお付き合いになる課長さんとも話が弾み、Mさんとも今までしたことのない話ができて大満足!(・・・酔っぱらって、殆ど内容は覚えていません!スンマセン!爺なので)
気が付けば、周りには別のお客さんも二組入っている。近所には大きな企業も有り、知名度さえ上がれば客も増えるだろう。

お酒も、「武者返し」という焼酎、「岩井」というウィスキーのロックへと進む、進む!
ひょっとして、ここ最近にしてはすこぶる酒量が多くない?
ふと確認すれば時間も22時を過ぎている。
あっという間の4時間だった。

最後に、課長さんとMさんには9月7日のライブの宣伝をして家路に着いた。
しかしお店の外観写真を取り忘れたのは大失敗!
私は桜通り線「高岳」を目指し、課長さんは「栄」かな?

地下鉄では空席が有っても、立って帰ったのは勿論のことである。

2013年8月5日月曜日

8月3日国立演芸場にて

久しぶりの落語ライブだった。

東京の友人宅付近で開催される花火をマンションのベランダからみるという集いが毎年開催されるのだが、私は3年ぶりの参加である。

花火は8月3日夕方。
それまでの空き時間を利用して、私の趣味の一つである「落語」を聴きに行く事を思い立った。
事前に、都内の寄席4軒の出演者をネットでチェック。

池袋演芸場は昼席トリが柳家小三治だったので、これで決まりじゃん!
と思いきや、この日は小三治師匠、お休みだと言う。
連日ではお身体に響くのであろう。

なにせ、師匠ご高齢にして、最近は味わい深さも、更に深みを増してきたとは言え、見るにお労しい雰囲気。
地方在住の身の上としては、残り少ないチャンスを逃すまい(ごめんなさい)、と勢い込んだのだが・・・・・

新宿末広、上野鈴本も、もちろんチェックした。
どちらも遜色の無い演者の顔触れだが・・・・
ふと思い出した。
宿泊ホテルが「グランドアーク半蔵門」だ。
ということは「国立劇場=国立演芸場」が間近だと言う事である。

急ぎ国立演芸場のチェックをすると、トリは三遊亭円丈だ。
これに決めた。
名古屋出身という親近感と、破天荒な新作落語は以前から好きだった。
特に、円楽の死後、7代目円生という大名跡を誰が継ぐか?という騒動の折には、この人も嘘か本気か、名乗りを上げている。
私は新作しか聴いたことが無いが、古典もすると言う。

さて、初めての「国立演芸場」はホテルのすぐ近く。
最高裁判所の隣である。
それにしても、そのエントランスは侘しすぎる。
地下鉄「半蔵門」「永田町」どちらから歩いても、広くは無い道の横を高架の道路に覆い隠されたその先が入り口である。
まぁ「演芸場」だから、しかた無いか?と思ってはみたものの、「国立劇場」にしても大差無いのだ。
これが、「国立施設」の入り口?
これは如何なものであろうか?
仮にも日本文化の一翼を担う歌舞伎・文楽・・・・・落語が、このような扱いとは何とも情けない。
もちろん、繁華街である必要は無い。
本当にその芸が好きな人だけが来れば良いのだから・・・
しかし、いくら裁判所の隣だからと言っても、別に頭を低くして入る必要などないのだ。

入ってみれば、国家公務員なのだろうか?と思う程明るい職員が出迎えてくれる。
始めは前座か二つ目の高座だから、ということで奥にある展示コーナーを見学。
そこでは「思い出の噺家たち」という展示会が開かれていた。


確かに、鬼界に行ってしまった懐かしい人達ばかり。
古い所では六代目円生、彦六(正蔵)、伸治(文治)、馬生・・・・
新しい所では、円楽、談子の写真が。
いずれ劣らぬ名人ばかりだ。




さて、席についてみると、「ふう丈」が終わる所。「丈」の字からして円丈の弟子なのだろう。
次に登場したのが「三遊亭亜郎」という噺家。
演目が「反対車」だというのは、すぐに分った。
このお題は、沢山の噺家が演じているが、体力勝負の落語だ。
私の記憶では、伸治と名乗っていた頃の若き桂文治が演じているのをテレビで見た事が印象深い。私も随分若かったと思うが・・・・
なかなかに亜郎という噺家、滑舌も見事であり、見る方にもスピード感と緊張が伝わってくる。
これで前座?という疑問は最後まで解けなかった。
どうみても、それほどには若くないのだ。
後で調べてみれば、彼は「劇団四季」出身という異例な経歴を持ち、年齢も私の10歳下。なんと誕生日が全く同じときている。
34歳で小朝に弟子入りし、そのご円丈一門に移籍し・・・・二つ目
なるほど、 年齢の割には芸歴は短いということか。
しかし、この芸ならば真打ち昇格も遠からずだろう。

その後は、「丈二」の新作、いろモノと続き、夢月亭清麿の新作「東急駅長会議」。
この人は早稲田大学出身というから、ちょっと驚く。
ネタも東京都内の駅の優劣を皮肉った内容で、実に面白い。
私は地方人だが、サラリーマン時代に東横線を頻繁に利用したので、その上下関係が面白かった。
惜しむらくはこの人の特徴なのか、声が小さい。
毒っけのある内容の割に優しい声なので、寝入っている客も居たようだ。

次が「柳家こゑん」。名前からしてやはり小さんの弟子だったらしい。
新作「銀河の恋の物語」。七夕をテーマにしたネタである。
調べによれば、この人、相当な天文マニアとか。
なる程、その人にしてこのネタ。
さわりの部分は聴いたこともあるので、テレビにでも出ていたか?
なかなか、この人の語り口調も、軽やかで聴き易い声だ。

中入りの後は、柳亭左龍の「お菊の皿」。
これは定番中の定番!
体型と同じく迫力のある声で、オーソドックスな古典を聴かせて貰った。

次は手品の「ダーク広和」
本音を言えば、全く期待していなかったのだが、そこは見事なまでに裏切られた。
笑顔と語り口調が素晴らしい!
台本があるのか、全てアドリブなのか・・・恐らく或る程度の筋書きはあり、あとは現場対応ということなのだろう。
いわゆる「芸人風」ではなく、ただの「素人中年オタク」っぽい雰囲気が逆に人を妙に惹きつける。
「古典手品オタク」と自身も語っていた。拾い物をした気分だった。

さて、トリの「円丈師匠」。
今日の演目はMOVIE落語「タイタニック」。
マクラの上手さは申し分ない。
彼らしい語り口が始まる。
本編に入ると、少し滑舌の悪さが少し気になり始めた。
まあ、年齢の事を考慮すれば仕方ないのかもしれない。
私だって、固有名詞が出て来ない事は日常的なのだから・・・・
が、しかし若い頃の彼を知っているだけに少し寂しさを感じるのは否めない。
しかし、ドラマティックな場面での語りは、若い頃に比べると感動的ですらある。
歳の効というヤツか?
一度彼の「分七元結」や「芝浜」なんぞ聴いてみたいものだ。
そして、「落ち」の二段重ねは大いに笑わせてくれた。

こうして有意義な3時間はあっと言う間に終わってしまった。
これで、2千円なのだから、安過ぎるほど。
あと4年経てばシルバー料金1300円というから、楽しみである。

その頃に、新幹線もシルバー料金ってヤツができてれりゃ、申し分ねぇんだがね?